「あのさあ、本当ありえないんだけど」
「だから、別にいいって言ってるじゃん」
「そう言ってこの間みたいに一人でひたすら仕事してクリスマスイブを寂しく過ごすつもり?」
「うぅ……」
小言を撒き散らしながら隣で仕事を手伝ってくれる宇佐美に頭の上がらぬ思いのまま、私たちはひたすらにキーボードを叩いた。どうして私というやつはこうも要領が悪いのか。
「埋め合わせがてらちゃんとこの後美味しいもの食べさせてよね」
「頼んでないのに手伝っておいてそれも酷くない?」
「ふぅん、言うじゃん。じゃあもう僕帰ろうか?」
「ごめんなさい嘘ですよろしくお願いします宇佐美様!」
そんなバカなやり取りをしながら、休日出勤の末に普段ならば定時を迎える時間にはやり残した仕事が片付いた。
「おわ、ったー! もうこれ今日中になんとかしとかないと来週の仕事納めも怪しかったの……本当にありがとう」
「ったく、お前はいつもいつも。自分のキャパ以上に仕事受けすぎなんだよ」
「面目ないです」
「ほら、じゃあ行くからさっさと用意して。時間間に合わなくなるから」
「え? 時間って?」
「あのねえ、イブに予約なしで入れる店があると思う? そつがない僕がちゃんと予約してないと夕飯まで食いっぱぐれるところなんだけど?」
「えぇ? 言っとくけど、私そんなに持ち合わせないよ? 近くの適当な店行くつもりだったし」
「別に、お前に出してもらうつもりないからいいよ」
「え。だってそれじゃお礼にならないじゃん」
コートを着た宇佐美が大きなため息をつきながら私の前まで歩み寄る。
「元々お前を誘って口説くつもりで予約してた店だから気にしなくていいよ」
「……は、え?」
「まさか直前まで仕事手伝わされると思わなかったけどね」
「え、あの、え?」
「……なに、断るつもり?」
「……いえ、喜んでお供させていただきます」
真っ赤な顔でそう言えば、宇佐美は満足そうに笑った。