二人で飲み会を抜け出したあの日、私たちは杉元くんの知り合いがバイトをしているというバーに足を運んだ。バーと言ってもカジュアルなお店で、女性一人でも気軽に訪れやすそうな店だった。カウンターの中には、なんだか大人の色気が溢れている男性と、ニコニコ笑顔を絶やさない坊主頭の男性が二人。後者の男の人が杉元くんの友人で白石くんと言うらしい。
その日はほんの少しお酒を飲んで、楽しい時間を過ごした。あれ以来、杉元くんとは学内でもたまに話をし、みんなとの飲み会以外でもご飯を食べに行ったり白石くんがバイトをするバーに飲みに行ったりしていた。
もうすぐ大学も冬休みに入ろうとしていたある日、学内で杉元くんに呼び止められた。
「ナマエさんって、地元この辺?」
「ん? うん、そうだよ。実家暮らしなの」
「そっか。じゃあ冬休みに帰省する訳じゃないんだね」
「うん」
ほっとしたように胸を撫で下ろす杉元くんにどうしたのかと首を傾げていると、杉元くんは2枚の紙を差し出して言った。
「あのさ、今度の土曜日……もしよかったら、俺と遊びに行かない? 映画のチケットがあるんだ」
「え……うん、予定はないけど、でも私でいいの?」
「うん、ナマエさんとがいいんだ」
受け取ったその紙は、今話題の恋愛映画のチケットだった。杉元くん、意外とこういうの好きだって言ってたっけ。
「その後、ご飯も行きたいんだけど、いい?」
「うん、じゃあ楽しみにしてる」
「また時間は連絡するね」
「うん」
嬉しそうに去っていく杉元くんを見送った後、私は手帳を取り出した。予定を書き込もうとして、その日がクリスマスイブだと気付く。
イブの日に、映画に行って食事をして。そんなお誘いを受けたらいやでも期待をしてしまう。何を着ていこうかななんて考えながら、私は浮かれた足取りで次の講義へと向かったのだった。