スイカ割り-アシㇼパ-
当たりを引いたのは、なんと私だった。スイカ割りなど、幼い頃に学校の何かでやって以来だし、その時も回りの賑やかしだったからあまり自信がない。渡された目隠し布をつけると、何となく周囲から息を呑むような気配を感じた。
「おいお前ら、ナマエを変な目で見るなよ!」
アシㇼパちゃんの声が聞こえる。その意味をよく理解していないまま、ぐるぐるとその場で数回まわり、棒を構えて歩き出す。三半規管の弱い
私はほんの数回まわっただけで足元がふらふらになっていった。
皆の指示は聞こえるが、その指示通りに歩いているつもりなのにまったく思うように進んでいない気がする。それどころか、離れた場所にいるはずの皆の声が近くなっているような気さえした。
オロオロとしていると、アシㇼパちゃんの声が近づいて来た。
「ナマエ、もういい! 変われ! このままだと危ない!」
「うぅ、ごめんなさい……」
年が離れたアシㇼパちゃんに言われ情けなく思いながら交代をする。アシㇼパちゃんは少し位置がズレたものの見事棒をスイカに的中させていた。
二人でスイカを切り分けながら、情けなくってごめんねと小さく謝ると、目を丸くしながらアシㇼパちゃんは言った。
「違う、さっきのは……」
「えっ?」
「あいつら、ナマエが前が見えず足元が覚束ないのをいい事にあわよくば自分の方によろけてこないかと期待していたんだ。白石なんか応援する振りして少しずつナマエに近付いていってたぞ」
「えぇ、そうなの?」
「ナマエ、お前はもっと色々自覚して気を付けろ。あいつら皆ナマエの事を狙ってるぞ」
「あはは、アシㇼパちゃん、いくら何でもそれは考え過ぎだって!」
まあ、このくらいの年頃の子は全部そういう風に見えちゃうのかもしれない。大人びて見えるけど、アシㇼパちゃんもお年頃なんだなぁ、なんて考えていると隣のアシㇼパちゃんは溜息をついた。
「うん、わかった。お前の事は私がしっかり護ってやるからな」
そうしっかりと目を見て言うアシㇼパちゃんはここにいる誰よりも格好よく見えて、年の離れた女の子相手に不覚にもドキドキしてしまった夏のある日だった。