スイカ割り-尾形-
当たりを引いたのは、車を出してくれた尾形さんだった。てっきり海自体誘っても来ないものだと思っていた尾形さんは、海についてもパラソルの中にいて皆を遠巻きに眺めていて、あんまり乗り気じゃなかったかな? と申し訳なくなる。かと思えば、スイカ割りをするとなるとそそくさとクジを引きに来たり、楽しんでいるのかいないのかいまいち掴めないなと思った。表情から感情が読めないまま、目隠しをしてぐるぐると回される。杉元君が面白がって何度も回していて、思わずやり過ぎだよと止めた。かなりふらついている。
「おい尾形、それじゃ逆だ」
「尾形ちゃん、もうちょい右回りして~!」
「あ、尾形さんその辺からまっすぐ! あ、やっぱ左!」
ふらふらとしながら私達の指示を聞き、標的のスイカに近付く。「尾形! そこだ!」というアシㇼパちゃんの声を合図にヒュッと棒が振り下ろされる。場所はよかった。だが振りかぶった際、少しだけ位置がズレ、振り下ろされた棒はスイカではなく砂の上に着地した。
「あらぁ~? 射的は得意なのに、接近戦は苦手なんだなぁ~?」
先日の祭りで射的勝負に勝てなかった杉元君が揶揄う。ちっ、と舌打ちをしながら尾形さんはまたパラソルの中に戻っていった。もうこのままスイカを切り分けるぞとアシㇼパちゃんが用意しているのを手伝おうと思ったが、それよりも尾形さんが気になるので追いかけた。
「……なんだ」
「いや、あの、尾形さん楽しめてるかなって思って」
「楽しめてない、と言ったら?」
「う……やっぱり……? 誘ってごめんなさい」
「冗談だ、それなりに楽しんでるから心配するな」
「本当ですか?」
「あぁ、お前の水着姿も見れたしな」
「なんですか、それ」
「……お前が誘ったから、来たんだ。あいつらに誘われたんだったら、断ったぞ」
「えっ」
吸い込まれそうな真っ黒な瞳でこちらをじっと見つめながら言われるもんだから、思わず言葉を失ってしまう。
「誘ったんだから、責任持って楽しませてくれるんだろう?」
そう言って尾形さんが私の頬に向かって手を伸ばす、その手が触れるか触れないかのところで、スイカ切り分けたぞというアシㇼパちゃんの声が聞こえて思わず立ち上がる。
「す、スイカ! 食べに行きましょ! ね!」
「……あぁ」
このまま近くにいたら聞こえてしまいそうなくらい高鳴る鼓動が、尾形さんの耳に届いてしまう前にと私は振り返り皆の元へと走って行った。