スイカ割り-杉元-

 当たりを引いたのは、スイカ割りの言い出しっぺ杉元君だった。
「よし、任せろ!」
 意気揚々と目隠しをして、棒を持ちぐるぐるとその場を回る。ほんの少し回るだけのものだと思っていたが、鯉登さんや尾形さんが必要以上に回そうとするので、杉元君はふらふらだった。
「杉元ぉ! もっと右だ右!」
「あっ待って杉元君行き過ぎ行き過ぎ! ほんの少し左に行ってー!」
「ちょちょ杉元~そのまままっすぐ来ちゃうと俺に当たっちゃうぜ~」
「はははっ、あれしきで目を回し前後不覚になるとはなっとらんな杉元ぉ!」
 皆からそれぞれ指示をされながら、杉元君がなんとかスイカの近くまで辿り着く。
「そこだ、杉元!」
 黙って見守っていた月島さんの一声で杉元君がシュッと棒を振り下ろす。位置取りはよかったが、腕の振りが少しズレたのかスイカは綺麗には割れず、端の方だけが少し欠けるような形となった。
「ははぁ、どうやら杉元は射的だけでなくこういうものも苦手らしい」
 前髪を撫で付けながら尾形さんが揶揄う。どうやら先日お祭りの時にした射的勝負の事を言っているらしかった。
 目隠しを取りながら少し悔しがる杉元君に声を掛ける。
「でも、すごい勢いで振り下ろしてたし、下手したら砕けちゃってたかも! 楽しめたけど、切り分けやすくて食べられる部分も多いなんて最高だよ、ありがとう!」
 フォローのつもりで話し掛ければ、照れ臭そうに頬を掻きながら杉元君は笑った。
「そう? でも、格好悪かっただろう?」
「え? 棒を振り下ろす姿、鬼気迫っててとても格好よかったよ! 美味しいスイカ、持ってきてくれてありがとう! 私スイカ大好きだからそれだけで嬉しいよ!」
「うん、ナマエさん、スイカ好きって言ってたからさ。喜んでもらえてよかった」
 そういえば、去年の夏にも皆でスイカを食べながらスイカが大好きだという話をした事がある。覚えていてくれたんだな、とじんわりと胸が熱くなった。
 
 私が杉元君と話している間にも、アシㇼパちゃんがさっさとスイカを切り分けてくれていた。ほら、お前らも早く食べろと渡されたスイカを頬張りながら、また来年もこうやって杉元君とスイカを食べられたらいいなと考えていると、まるで心の中を読まれたように「来年も美味しいスイカ、食べようね」と隣で杉元君が微笑んだのだった。

セリフが続いたときに誰が何言ってるのか伝われ〜!の気持ちで書いてました。