おいしい季節
梨にぶどうに栗、かぼちゃとそしてさつまいも。秋は美味しいものが多すぎる。
クッションを抱えベッドに背中を預けてスマートフォンをいじっていると、部屋の主人がさらりと私の髪を撫でた。
「何見てんの……ってまーた食べ物ばっか」
「だってさぁ、秋限定のものって美味しそうなものばっかりなんだもん」
「お前は本当、芋とか栗とかに目がないよねぇ」
きのこに興味がなくてよかったよと言いながら、ベッドを軋ませ彼は私の肩越しに画面を覗き込んだ。
「これなんか美味しそうだね」
「でしょ? 気になってたんだよね。でもこっちも捨てがたい」
「そんなに食べてたら、すぐ体重増えるんじゃない?」
「夏バテで減ってたからプラマイゼロだよ」
口を尖らせながらそう講義すると、呆れたようにため息を吐くのが顔を見ていないのに分かった。確かに出会った頃に比べたら、ほんのちょっぴり丸くなったような気はするけど周りよりは細い方だと思うんだけどな。
もう少し体型に気をつけてこのスイーツは我慢すべきだろかと画面と睨めっこをしていると、ツゥっと彼の唇が私の首を這った。びくりと体を震わせた私の肩を何度と食んで、「まあ確かに、秋のお前はいつもより美味しく感じるもんな」とほんのり甘さを増した声で囁かれる。それだけで、私の体は昨夜の熱を思い出す。
「な、にそれ」
「それで? 今日はどこのカフェの何が食べたいって?」
言いながらも私の体をゆっくりと指先でなぞる彼のその仕草に、果たして今日目当ての秋の味覚を味わえるのはいつになるのだろうかと思いながら振り向く。彼の両頬のほくろが左右対称に位置を上げるのを見て、私はゆっくりと目を閉じた。
金カ夢一本勝負「秋の味」というお題にて。秋の味覚って美味しいですよね。
初出・2023/10/21
初出・2023/10/21