五日目「並ぶ影・手のひら・ひなたぼっこ」

「そんなところにいて、寒くないか」
「うん、平気。日差しが出ていて暖かいくらいよ」
 ベランダへと続く大きな掃き出し窓の前で、先ほど取り込んだばかりの洗濯物を簡単に畳んでいると在宅仕事を終えたらしい基さんがパタパタと近付いてきた。元々世話焼きで心配性の基さんが、ここ数ヶ月はより私を体に気を遣うようになった。ありがたい事ではあるが、なんだかそれはくすぐったい。
「あんまり体が冷えるのは良くないぞ」
「うーん、そうなんだけどね。不思議な事に全然寒くないというか、あったかいくらいなの。本当に」
「そうなのか?」
「うん。下手したら少し動いただけで汗がでそうなのよ」
「ふぅん……まあ、あまり無理するなよ」
「うん。それはもちろん。……あっ」
「なんだ、どうした?」
 小さく声を上げる私に、基さんは心配そうに顔を覗き込む。そんなに心配しなくても大丈夫よ、と言いながら私は笑ってそっと彼の手首を掴み大きな手のひらを私のお腹へと導く。
「今、動いたよ」
「本当か? ……なんだ、何もないぞ」
「あらあら、お父さんの声に反応したかと思ったのに、照れちゃったかなぁ?」
 少しずつ位置を変えながら私のお腹をさする基さんの手のひらに、お腹も心もくすぐったい。
「早く会いたいね」
「……そうだな」
「もう、また不安そうな顔して」
「ん……すまん」
「大丈夫、大丈夫だよ。私と基さんなら、きっと」
 基さんの大きな手のひらに、私の小さな手のひらを重ねる。暖かな昼下がり。差し込む光でできる影を見ながら、もう少しでこの並ぶ影に、小さな影が一つ増えるという事実に、私の胸はまたくすぐったさを覚えるのだった。