七日目「目を細める・お茶・一生懸命」

 店の自動扉が開き、パッと顔を向けるとそこには最近よくいらっしゃる男性が立っていた。
「いらっしゃいませ、今日はどうされますか?」
「どうも。今日の甘味は塩大福なのだが、これに合うのはどの茶だろうか」
「ああ、あちらのお店の。それでしたらこちらの——」
 一度見たら忘れない特徴的な眉をし、だけどそれがなくても一度会えば強く印象に残るような整った顔立ちとスタイルをした褐色の肌のこの男性は、数ヶ月ほど前からよく来店されるお客様だ。彼はここから少し行ったところの会社に勤めているらしい。とはいえ、彼自身の勤務地はここから電車で数本分離れたその会社の支社らしいが。
 どうやら定期的に本社に顔を出す際、上司だか懇意の取引先だかが甘味好きと言うことでいつも有名店の菓子を買ってはそれに合うお茶はないのかとこの店に顔を出してくるのだ。
 初めての来店の際からいつも一生懸命にお茶を選ぶその姿が、見た目のスマートさとどこかギャップがあって可愛らしくついおすすめするのにも力が入ってしまう。
 よければ試飲してみます? と薦めれば、「なるほど、これならあの人も気に入ってまた褒めて下さるだろう」と彼は目を細めた。納得した様子の彼に胸を撫で下ろし、お茶っ葉をお包みする。
 お品物を渡していつものように礼を伝えると、彼はとびきりの笑顔を浮かべた。
「貴女のおすすめにはいつもハズレがない。お茶だけでなく先日勧めていた別の店の茶菓子もとても美味かった。いつも悪いな」
「いえいえ。喜んでいただけて幸いです」
「……また、よろしく頼む」
「はい、いつでもお待ちしていますよ」
 そう言って彼に向かって頭を下げれば、嬉しそうに目を細めて彼も小さく会釈をした。さて、次には何をおすすめしようかと思いながら、私はその後ろ姿を見送るのだった。