「わあ、思ったよりも積もりましたねえ」
「はぁ〜もうそんな季節なんだねぇ、おぉ寒い」
はしゃぐ私と、コートのポケットに手を突っ込んで身を縮める門倉さん。全く対照的だ。
「おいおい、そんなにはしゃいでると滑って転ぶぞ」
「へへへ、気をつけまーす」
「まったく……って、うお!」
ドテン! と大きい音がしたかと思えば、はしゃぎ回る私ではなくて、ほとんど動いてなかったはずの門倉さんが盛大に尻餅をついていた。どうやったらあの状況から転んでしまうというのだ。
「ちょっと、大丈夫ですか?」
「あいてててて、腰もちょっと打っちまった」
「まったく。こういう時は、はしゃいでる私がこけちゃって、門倉さんが王子様みたいに颯爽と助けてくれるもんなんじゃないですか?」
「おいおい、こんなオッサンにそんな理想押し付けるなよぉ」
困ったように眉を下げて口を尖らせて門倉さんは言う。まあ、そんな風に格好つかない門倉さんの事も好きだからいいのだけど。
「ちぇっ。ほら、しっかり捕まって下さい。よ、っと」
私が差し出す手を門倉さんが掴み、立たせようと力を入れる。が、彼がちょうど立ち上がると同時に今度は私が足を滑らせ、バランスを崩してしまう。
「わ、きゃ!」
「おっと!」
痛みを覚悟し目をギュッと瞑るが、体のどこにも痛みは走らなかった。代わりに背中に回された、微かな温もり。
「まったく、起こす方がこけてちゃ世話ないぜ」
目を開けるとそこには、私がこけないように支えてくれていた門倉さんがいた。ぷるぷると体が震えていなければ、王子様のようだというのに。あとほんの少しの格好がつかないところが彼らしい。
「あいててて、さっき打った腰が今のでトドメだったらしい」
「あ、ちょっと! それ私が重いって言いたいんですか?」
「そんな事は言ってないけどよ」
少し慌てながらも腰をさする彼に、帰ったら湿布を貼ってあげよう。これ以上悪化する前に、早く用事を済ませなくちゃ。
「もう転ばないようにお互い気をつけなくちゃね」
そう言って彼の手を取って、ゆっくりと歩き出した。白銀の世界に、二人の足跡が並んでいった。