ひんやりとした風が頬を撫でる。鮮やかに彩られた街、賑やかな人々、和気藹々と盛り上がる前方の仲間たち。飲み会の帰り道、酔いを醒ましながらみんなより少し下がってその様子を眺めるのは好きだった。もちろん、誰かと並んで話しながら歩くのだって嫌いではないのだけど。
まだ体内から抜けないアルコールによってふんわりほわほわした気持ちで歩いていると、後ろから声を掛けられた。
「大丈夫? みんなと離れてたら危ないよ」
「あ、杉元くん」
「まあこの距離なら大丈夫かもしれないけどさ。もうこの時間酔っ払いも多いし、女の子一人でいたら変なのに絡まれて危ないよ」
「んー? んふふ、そうかな? 私も酔っ払いだよー」
「だから危ないんでしょ」
まったく、と少し眉を下げて笑う杉元くん。彼も先ほどまで一緒に飲んでいた大学の友人メンバーの一人で、そして、私が目下片思いしている相手だったりする。
「それにしても杉元くんがみんなといないの、珍しい」
「ああ、店出る前にトイレ行ってて。ひどいよな、トイレから出たらみんなもう店から出て歩き出してるんだぜ?」
「あはは、そうだったんだ。気付かなくてごめんね」
「幹事には声かけて行ったんだけどね」
「あー。彼なら二軒目行く人ー! ってみんなに聞いて回って忙しそうだったよ」
「チェッ、飲み会大好きなんだよなあいつ」
ダウンジャケットのポケットに手を突っ込みながら唇を尖らせて杉元くんは言う。その横顔に、なんだか可愛らしくて笑みが溢れる。
「でもまあ、置いて行かれてよかったかも」
「え? なんで?」
「後ろで一人で歩くナマエさんを見つけれたから」
「……え?」
「さっきも言ったけど、女の子が一人で離れてるの危ないよ? いっつも気になってた」
「……いつも?」
「うん。……あ、」
しまった、と言わんばかりの顔をして杉元くんは右手をポケットから出し、その大きな手で口元を覆った。
「……はは、これじゃ俺がナマエさんをいつも気にかけてるの、バレちゃうね」
そんな風に彼が笑うもんだから、私の心臓は跳ね上がった。きっと赤くなっているであろう顔を隠すために、思わず目を逸らし顔を下げた。鎮まれ、私の心臓、なんて思っていると杉元くんがまた口を開いたので、その願いは叶わなかった。
「あのさ、もしよかったらこの後二人で抜けない?」
冷たい夜風に包まれていると言うのに、頬があつい。これはアルコールのせいなのか、それとも彼のせいなのか。きっとアルコールのせいだ、そしてこれも、全てアルコールのせい。そう心の中で言い訳をしながら、私は彼の提案にコクリと頷くのだった。