十六日目「いたずら・風除け・抱きしめたい」

 木々の葉っぱが赤や黄色に色を変えたかと思えば、風に乗っては散ってすっかり見目寂しくなった頃。あと数週間早く通っていれば見事な紅葉が見られただろうなと言う並木道を二人で歩く。
「寒いねぇ」
「寒いね。見て、この木たち白石くんとお揃いだよ」
「ん?」
「葉っぱがなくって寒そう」
 そう言って、彼女は頭を指さした。坊主頭の俺と葉っぱの散り去った木がそっくりだという意味らしい。そんな事考えた事もなかったな。
「えぇ〜? 髪伸ばしたら少しは寒いの減るかなぁ?」
「少しは変わるんじゃない? でも私白石くんの坊主好きだけどなー」
 確かに彼女は二人で家でいる時にやたらと頭を触ってくることが多い。「このショリショリ感がいいよねぇ」なんてニコニコと言ってくる彼女が可愛くって、俺はよく無言で頭を彼女に差し出しているのだ。外では恥ずかしがってなかなかくっついてこない彼女とのそんなスキンシップも、俺にとっては大好きな時間。
「うぅ、それにしても寒い。風冷たい」
「本当。早く帰っちゃおうぜぇ」
 お互いに上着のポケットに手を突っ込んで、首をすくめ縮こまりながら並木道を歩く。すると珍しく、彼女が俺の背中の方にスススッと近づいて身を寄せてきた。
「! ど、どうしたの?」
 外では手を繋ぐのも恥ずかしがる彼女の突然の積極性にドギマギしながらも、表情が見えない彼女に話しかけた。
「んん? ……風、冷たかったから」
「……もしかして俺、風除けにされてるぅ?」
「えへ、そうだよ」
 少し笑いながら言う彼女の表情は相変わらず見えないけれど、いたずらな顔して笑っているんだろうと言うのは想像に難くない。
「ちょっと〜これだと歩きづらいんだけどぉ〜?」
「へへ、それもそうか」
 ぴょこっと背中の方から顔を覗かせた彼女は、やっぱり子供のようにいたずらな顔をしていて。そんな彼女が愛おしくて抱きしめたい衝動に駆られる。けど、グッと我慢して。
「ん」
「ん?」
「風除けにはならないけど、繋いでたら少しはあったかいかもよ?」
「えぇ〜?」
「ここ、今俺たちだけしかいないみたいだしさ」
「……ん、まあいっか」
 抱きしめる代わりに差し出した左手を、はにかみながら彼女は右手でそっと握る。それぞれポケットの中で温めた手は互いに熱を分け合って、ポカポカ温かい気持ちで家へと向かっていったのだった。