ほろ酔いの恋人気分

 赤提灯の並ぶ飲み屋街を、ふわふわとした頭で歩く。ふらりと足がもつれそうになった私を、基さんががしりと掴んだ。
「危ないぞ、飲みすぎたか?」
「そんなに飲んでないんだけど、雰囲気に酔っちゃったのかも」
「まあ、外に飲みに出るのは久しぶりだからな」
 掴まれた腕をそっと基さんの腕に絡ませながらギュッと近付いた。
「あの子、泣いたりしないかしら」
「お泊まりももう三度目だし、大丈夫だろう」
「ふふ、きっと今日もうちの両親はヘロヘロになってるでしょうね」
 愛娘は、今夜は私の実家にお泊まりをしている。最初の夜こそこちらの方がソワソワして眠れなかったが、元々じーじとばーばが大好きな娘にはとても楽しい夜だったらしく、次はいつお泊まりに行こうかと何度も口にしていた程だった。
 結局先月、先々月と月に一度のペースでお泊まりに行き今夜は三度目だ。
 迎えに行く心配もなさそうだから、久しぶりに飲みにでも出るかと基さんに誘われ、恋人時代に何度も行った焼き鳥屋さんの暖簾をくぐった。
 おなかいっぱい食べて、嗜む程度にお酒も飲んで、目の前には大好きな旦那様の姿があって。
 ああ、幸せだなぁとふわふわとした頭で思う。
「また来月もあの子お泊まりしたいって言うかしら」
「そうしたらまた飲みに来よう」
「うん。ふふふ、前によく行ってたあのお店にも行きたいなぁ」
「二軒目で行くか?」
「もうおなかいっぱいよ」
「それもそうか」
 ゆらゆらと揺れる景色の中で二人並んで帰路へとつく。久しぶりの恋人気分を味わう夜、たまにはこんな日もいいもんだなぁと思いながら、また強く彼の腕にしがみついた。

金カ夢一本勝負「久しぶり」というお題で書きました。
ついパパ島前提で書いてしまう。
初出・2023/05/21