二十五日目「聖なる夜の過ごし方」白石編

「寒いねぇ」
「うん、寒いね。どんどん冬本番って感じ」
「気温はぐんと下がっていくし、財布の中身も寒くなるし」
「うん、財布は白石くんが競馬に負けたからだからねー」
「くぅーん」
 まったくもう、と少し怒ったように頬を膨らませて彼女は俺の隣を歩く。歩き慣れた並木道、相変わらず首をすくめてポケットに手を突っ込んで。
「あーぁ、クリスマスなのに豪華なディナーはなしかぁ」
「えぇ〜? そういうの行きたかったのぉ〜?」
「ううん、言ってみただけだけど」
 にひひ、と鼻先を赤くした彼女は笑う。俺と過ごせるならそれで十分、なんて、それこそ十分過ぎるほどの言葉を発する彼女が愛おしくてたまらない。
「あのさぁ、ナマエちゃん」
「なんだい白石くん」
「ちょっとあっち向いて、そんでそのまま立って待ってて」
「えぇ〜? なになに?」
 弾んだ声で言われた通りに従う彼女をまた愛おしく思いながら、バッグに忍ばせていた彼女へのプレゼントを取り出した。この間彼女が眺めていたふわふわのマフラーだ。それをそっと巻いてあげると、彼女は嬉しそうに振り向いた。
「えぇ? 何これいつ買ったの? 競馬で全額負けたんじゃなかったっけ?」
「本当に有り金スッた訳じゃないぜぇ? それにこれは競馬するより前に買っておいたんだよ」
 まあ本当は、競馬に買って豪華なディナーにも連れて行きたかったんだけどねぇ? とおどけて言えば、彼女は仕方ないなぁと笑ってマフラーに顔を埋めた。うん、やっぱりよく似合う。
「じゃあ、私からも白石くんにプレゼントをあげよう」
「お、なになに〜?」
「後で渡そうかと思ったんだけど、寒そうだからね」
 笑いながら彼女はバッグから可愛くラッピングされたそれを取り出して、俺に渡した。
「帽子?」
「そ。これで頭、寒くないでしょ?」
 この間の会話を思い出して笑いながら、早速帽子を頭に被る。外は寒いけれど、二人で過ごす冬は、なんだか心がずっと暖かい気がしていた。

十六日目の二人のクリスマスのお話でした。